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自社の計算ツールがない潜水事業者は、減圧計画と記録をどう回すか

2015年(平成27年)4月の高気圧作業安全衛生規則(高圧則)改正で、国が示していた減圧表は廃止されました。今は、減圧停止の深さと時間を事業者自身が決めて作業計画に書くことが求められています。計算の仕組みを社内で整えられる事業者ばかりではありません。この記事では、専用のシステムを持たない事業者が取れる選択肢を整理します。

目次
  1. 何が「事業者の仕事」になったのか
  2. 現実的な4つの選択肢
  3. どの方法でも外せないチェックポイント
  4. まとめ

1. 何が「事業者の仕事」になったのか

改正前の高圧則には、深さと潜水時間から減圧停止を読み取る「減圧表」が別表として付いていました。この表は根拠となる理論がはっきりせず、潜水時間が長くなると諸外国の基準より減圧時間が大幅に短くなるといった問題が指摘されていました。

改正後は、体内に溶け込む不活性ガス(空気潜水では窒素)の分圧を計算し、許容値を超えないように減圧停止を決める方式に変わりました。計算方法は厚生労働省の告示(平成26年厚生労働省告示第457号)で示されています。いわゆるビュールマン(Bühlmann)のZH-L16モデルをもとにした方法です。

そのうえで、事業者は潜水の前に次のような事項を示した作業計画を作り、作業者に周知する必要があります(高圧則 第12条の2。潜水業務には第27条で準用)。

つまり「表を見れば済む」時代から、「自分で計算して、計画として残す」時代に変わりました。

2. 現実的な4つの選択肢

大手の中には、自社で計算の仕組みや専任の担当者を持つところもあります。そうでない事業者の選択肢は、おおむね次の4つです。

① 業界団体の推奨減圧表を使う

一般社団法人日本潜水協会は、改正後の計算方式にもとづく「日本潜水協会推奨減圧表(NSK減圧表)」を頒布しています。水に強い紙に印刷されていて、現場で表を引く従来のやり方に近い感覚で使えます。

向いているケース:潜水パターンが比較的決まっていて、紙の運用に慣れている。
注意点:表の読み違い・転記ミスが起きやすいこと。反復潜水の扱いや計画書・記録への書き写しは自分たちで行う必要がある。

② Excelなどで計算表を自作・流用する

告示の計算式をもとに、社内や知り合いの間でExcelの計算表が使われている例もあります。自由度は高い一方で、式の誤りや改変に気づきにくいのが弱点です。

向いているケース:計算式を理解して検証できる人が社内にいる。
注意点:作った人しか中身を説明できない「属人化」。どの版で計算したか分からなくなる版管理の問題。

③ 紙の様式で計画・記録を管理する

建設業の団体などが、潜水作業計画書の様式を公開していることがあります。計算自体は①や②で行い、様式に書き込む運用です。

向いているケース:元請けや発注者から指定の様式がある。
注意点:記入漏れのチェックが人頼みになる。5年間の保存場所の確保(後述)。

④ 計算と記録をまとめて扱えるアプリ・ソフトを使う

減圧の計算、作業計画、潜水記録を一つの仕組みで扱えるアプリやソフトもあります。転記の手間とミスは減らせます。ただし、計算の根拠がどこまで示されているか、対応している深さ・ガスの範囲は製品ごとに違うので、導入前の確認が欠かせません。

向いているケース:現場と事務所で同じ情報を見たい。記録の整理に手間をかけたくない。
注意点:計算結果を鵜呑みにせず、表や別の方法で突き合わせる運用を残すこと。

方法初期コスト転記ミスの起きにくさ記録の整理
① 推奨減圧表低い△別途必要
② Excel自作低い(作る手間は大)△〜○工夫次第
③ 紙の様式低い△保管場所が必要
④ アプリ・ソフト製品による○○

3. どの方法でも外せないチェックポイント

4. まとめ

減圧表の廃止によって、減圧計画は「事業者が根拠を持って決めるもの」になりました。自社システムがなくても、推奨減圧表・計算表・様式・アプリを組み合わせれば対応できます。大切なのは、どの方法を選んでも、計算の根拠を説明でき、計画と記録をきちんと残せる状態にしておくことです。

法令の全体像は高圧則の基本と2015年改正のポイントにまとめています。

この記事は法令・公的資料をもとに一般的な内容を整理したものです。個別の作業計画や法令の解釈については、条文・通達の原文を確認のうえ、所轄の労働基準監督署や専門家にご相談ください。

参考資料