潜水作業の記録:何を残し、何年保存するか
潜水作業の記録は、減圧症などのトラブルがあったときに「何が起きたか」をたどる唯一の手がかりです。2015年の高気圧作業安全衛生規則(高圧則)改正で、記録の作成と保存が明確に義務付けられました。この記事では、残すべき項目と、日々の管理のコツを整理します。
目次
- 法令で求められる記録
- 一緒に残しておくと役立つ情報
- 記録の方法ごとのコツ
- よくある失敗
- まとめ
1. 法令で求められる記録
高圧則では、潜水業務を行ったとき、次のような事項を記録し、5年間保存することとされています(第20条の2。潜水業務には第27条で準用)。
- 作業計画に示した事項:呼吸用ガスの成分、潜水時間、最大深度、潜降・浮上の速度、減圧停止の深さと時間など
- 潜水業務に従事した作業者の氏名
- 減圧を行った日時
「計画どおりに潜った」ことを前提にせず、実際の潜水時間や浮上の時刻が分かるように残すのがポイントです。予定より長く潜った、途中で浮上したなど、計画と違いが出たときこそ記録が役立ちます。
2. 一緒に残しておくと役立つ情報
法令で求められる項目に加えて、次の情報を同じ記録にまとめておくと、後から振り返りやすくなります。
| 項目 | 残しておく理由 |
|---|---|
| 潜降開始・着底・浮上開始・浮上完了の時刻 | 実際の潜水時間と減圧が計画どおりだったかを確認できる |
| 反復潜水の間の水面休息時間 | 同じ日の2回目以降の減圧計算の根拠になる |
| 作業前後の体調(健康チェック) | 体調不良と減圧症の関係を後から検討できる |
| 天候・波・潮・水温 | 作業条件の厳しさや、作業中止の判断の記録になる |
| 連絡員・送気員など作業体制 | 誰がどの役割だったかを確認できる |
| 器具の点検結果 | 潜水前の点検を行ったことの記録になる |
なお、潜水業務に就く人の特別な健康診断(雇い入れ時・配置替え時と、その後6か月以内ごと)の結果も、別途きちんと管理しておきましょう(第38条)。
3. 記録の方法ごとのコツ
紙の記録
- 現場で記入しやすいよう、項目を決めた様式を用意する
- 濡れても読めるよう、耐水紙や鉛筆を使う
- 事務所に戻ったら、日付・現場ごとにファイリングする。5年分の保管場所を確保する
Excelなどの表計算
- 現場名・日付・作業者名の書き方を統一し、検索や集計ができるようにする
- 元データのファイルを定期的にバックアップする
- 計算式を入れている場合は、誰がいつ変更したか分かるようにする
アプリ・クラウドサービス
- 現場で入力した内容を、事務所ですぐに確認できる
- 必要な項目を入力しないと保存できない仕組みなら、記入漏れを防げる
- サービスが終了した場合に備えて、PDFなどで書き出して保管できるか確認しておく
4. よくある失敗
- 予定時刻をそのまま書き写す:実際の時刻とずれていると、記録の意味が薄れます。
- 後でまとめて書く:記憶に頼ると時刻があいまいになります。できるだけその場で記録しましょう。
- 保存期限の前に捨ててしまう:保存期間は5年です。年度単位で箱やフォルダを分けておくと管理しやすくなります。
- 担当者しか場所を知らない:監督署の確認や事故のときに、誰でも取り出せるようにしておきましょう。
5. まとめ
潜水作業の記録は、法令を守るためだけでなく、作業者の安全を守るための大切な情報です。計画と実績の両方を残し、5年間いつでも取り出せる状態にしておきましょう。法令の全体像は高圧則の基本と2015年改正のポイント、減圧計画の立て方は自社の計算ツールがない潜水事業者の減圧計画と記録で解説しています。
この記事は法令・公的資料をもとに一般的な内容を整理したものです。個別の作業計画や法令の解釈については、条文・通達の原文を確認のうえ、所轄の労働基準監督署や専門家にご相談ください。