潜水士ノート

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高気圧作業安全衛生規則(高圧則)の基本と2015年改正のポイント

業務として潜水作業を行う事業者には、労働安全衛生法にもとづく「高気圧作業安全衛生規則」(以下、高圧則)が適用されます。1972年(昭和47年)に定められ、2015年(平成27年)4月に大きく改正されました。この記事では、潜水事業者が押さえておきたい基本と、改正で何が変わったかを整理します。

目次
  1. 高圧則とは
  2. 潜水業務の基本ルール
  3. 2015年改正の5つのポイント
  4. よくある誤解
  5. まとめ

1. 高圧則とは

高圧則は、大気圧を超える環境で働く人の健康障害(減圧症などの高気圧障害)を防ぐための省令です。対象は大きく2つあります。

レジャーダイビングは対象外です。港湾・海洋土木、調査、水産など仕事として行う潜水が対象になります。

2. 潜水業務の基本ルール

潜水士免許

潜水業務には、潜水士免許を受けた人しか就かせることができません(第12条)。免許は国家試験に合格すると取得できます。

連絡員と携行品

送気式の潜水では、潜水作業者と連絡を取る「連絡員」を配置します。水中時計・水深計・鋭利な刃物などの携行も定められています。潜水器具は、潜水の前に点検しておくことが必要です。

健康診断

潜水業務に就く労働者には、雇い入れ時・配置替えの時と、その後6か月以内ごとに1回、医師による特別な健康診断を行います(第38条)。

3. 2015年改正の5つのポイント

① 減圧表の廃止と、計算による減圧管理

改正前は、規則に付いていた減圧表で減圧停止を決めていました。この表は根拠となる理論が明確でないなどの問題があり、廃止されました。代わりに、体内の不活性ガスの分圧を厚生労働省の告示(平成26年厚生労働省告示第457号)に示された方法で計算し、許容値(M値)を超えないように減圧停止を決める方式になりました。計算方法は、ビュールマン(Bühlmann)のZH-L16モデルがもとになっています。

② 作業計画の作成と周知

事業者は潜水の前に、呼吸用ガスの成分、潜水時間、最大深度、潜降・浮上の速度、減圧停止の深さと時間などを示した作業計画を作り、作業者に知らせる必要があります(第12条の2、潜水業務には第27条で準用)。既存の書類でこれらの項目がすべて網羅されていれば、新しい様式を作る必要はないとされています。

③ 呼吸ガスの分圧制限と、空気潜水の深さ

呼吸するガスに含まれる成分の分圧に、上限・下限が設けられました(第15条)。

ガス分圧の範囲
酸素18kPa以上 160kPa以下(一定の場合は220kPa以下)
窒素400kPa以下
炭酸ガス(二酸化炭素)0.5kPa以下

窒素分圧400kPaという上限から、空気で潜れる深さはおおむね40mまでになりました(改正前は空気潜水の上限が90mでした)。これより深い潜水では、ヘリウムなどを混ぜた混合ガスを使うことになります。

④ 酸素ばく露量の管理

酸素の吸いすぎによる肺への影響を防ぐため、酸素ばく露量の上限が定められました(第16条)。厚生労働省のリーフレットでは、UPTDという単位で1日600以下、1週間2,500以下とされています。水中での酸素減圧や、浮上後の酸素吸入もルールの中で行えるようになりました。

⑤ 記録の作成と5年間の保存

作業計画の事項、作業者の氏名、減圧の日時などを記録し、5年間保存することが義務になりました(第20条の2)。あわせて、減圧を終えた後の14時間は重激な業務に就かせてはならないことも定められています(第18条)。

4. よくある誤解

5. まとめ

2015年の改正で、潜水作業の減圧管理は「決められた表に従う」から「事業者が根拠を持って計画し、記録を残す」へと変わりました。自社に計算の仕組みがない場合の進め方は、自社の計算ツールがない潜水事業者の減圧計画と記録で紹介しています。記録の具体的な中身は潜水作業の記録の記事をご覧ください。

この記事は法令・公的資料をもとに一般的な内容を整理したものです。個別の作業計画や法令の解釈については、条文・通達の原文を確認のうえ、所轄の労働基準監督署や専門家にご相談ください。

参考資料